レコメンデーションとは?
マーケティングの常識を知ろう

レコメンデーションとは?マーケティングの常識を知ろう

レコメンデーションは、ネットショップなどで活用されているシステムです。消費者の行動を分析して、最適な商品を提示する技術で、アマゾンを始めとしたさまざまなECサイトで活用されています。この記事では、レコメンデーションの基礎知識や、メリット・デメリット、またレコメンデーションの理解に欠かせないベイズ理論などをわかりやすく解説します。

対面販売とは違って、ネットショップでは顧客の顔が見えません。その顧客が何を欲しがっているのか表情などから推測することはできず、また対面での販売ではないので、顧客から直接聞くことなども不可能です。そのため、創成期のECサイトは、顧客に対して最適な商品をおすすめできないという点に大きな課題を抱えていました。

しかし、ECサイトの購買環境は、種々のシステムが導入されるにしたがって、劇的に改善しています。特に、レコメンデーションと呼ばれるシステムは、ECサイトの環境を一変させたといっても良いほどインパクトの強いものです。そのため、ECサイトの構築には、まずこのレコメンデーションの基本を理解しておかなければなりません。

レコメンデーションとは、顧客にとって価値ある情報や商品を提示するシステムのことです。たとえば、店頭での対面販売では、レコメンデーションが日常的に行われています。魚屋の店主が顧客に対して旬の一品を紹介したり、飲食店で「ご一緒にフライドポテトもいかがですか」などとセットで薦めるのもレコメンデーションのひとつだといえます。

レコメンデーションの語源は、「推薦する」という意味を持つ「Recommend(レコメンド)」です。店頭販売では当たり前のように行われているおすすめ商品の紹介を、ECサイト上でも取り入れようというのがレコメンデーションの本質です。ECサイトを開いた際、売れ筋ランキングが表示されているのを見たことがある人も多いでしょう。この売れ筋ランキングも、レコメンデーションの一種です。

レコメンデーションの意義は、顧客の好みに合いそうな商品を効果的に提示できる点です。欲しい商品を探しやすいECサイトは、顧客満足度もより向上する傾向にあります。満足度が上がれば、ユーザーは同じECサイトを繰り返し使うようになるなど、マーケティングにおいて大きなメリットが得られるのです。

ECサイトにレコメンデーションの概念を取り入れたのは、アメリカのアマゾン・ドット・コムが先駆けだとされています。従来のネットショップは、ユーザーの検索キーワードのみで商品を探さざるを得ず、ユーザーが本当に欲しい商品にたどり着けない場合も珍しくありませんでした。検索キーワードからおすすめ商品を提示するという機能は、あくまで受動的なシステムに過ぎず、とても優秀なおすすめ機能とはいえなかったのです。

そのような状況を劇的に改善したのがアマゾンのレコメンデーションです。1990年代後半、アマゾンはオンライン書店として全く新しい種類のレコメンデーションシステムを導入します。それまでの受動的なおすすめ機能ではなく、顧客の嗜好(しこう)に基づいた能動的なレコメンデーションが可能となり、アマゾンはオンライン書店市場の地位を大きく向上させることに成功するのです。

レコメンデーションと似た概念に、パーソナライゼーションというものがあります。パーソナライゼーションとは、いわば個別化されたレコメンデーションのようなものです。レコメンデーションは一定のルールの下で顧客におすすめの情報や商品を提示するのに対して、パーソナライゼーションは1人ひとりの顧客の行動データを分析し、より個別的におすすめ商品などを提示するシステムです。たとえば、売上ランキングは個別化されていないので、レコメンデーションの一種と見なされます。これに対して、購入履歴や閲覧履歴からおすすめ商品を提示する機能は、より個別化されているので、パーソナライゼーションだといえます。 関連記事:顧客分析とは?必ず押さえておきたい目的やメリット・分析方法を紹介

レコメンデーションには、主に4種類の方法があります。「協調フィルタリング」「ルールベースレコメンド」「コンテンツベースレコメンド」「ハイブリッドタイプ」の4種類です。

ルールベースレコメンドは、一定のルールにしたがってコンテンツを表示するレコメンデーションです。サイトのトップ画面に表示される新着情報やピックアップアイテムなどは、ルールベースレコメンドに該当します。サイト側が売り出したい商品を訴求する際に有用なレコメンデーションシステムです。ただ、必ずしもユーザーが求めている商品をレコメンドできるわけではないので、表示するタイミングや期間などには注意する必要があります。

ルールベースレコメンドは、一定のルールにしたがってコンテンツを表示するレコメンデーションです。サイトのトップ画面に表示される新着情報やピックアップアイテムなどは、ルールベースレコメンドに該当します。サイト側が売り出したい商品を訴求する際に有用なレコメンデーションシステムです。ただ、必ずしもユーザーが求めている商品をレコメンドできるわけではないので、表示するタイミングや期間などには注意する必要があります。

コンテンツベースレコメンドでは、あらかじめコンテンツの属性を設定しておき、属性に応じて類似の商品をレコメンドする方法です。たとえば、コンテンツを価格帯やジャンルで分類しておき、ユーザーが特定のコンテンツにアクセスしたら、類似の価格帯やジャンルの商品をレコメンドするというシステムです。選択されたコンテンツをベースにして類似の情報や商品を提示するシステムで、新規のユーザーにも類似のコンテンツを表示できるメリットがあります。ただし、コンテンツが多すぎると、属性を分けるのにコストや時間がかかってしまいます。また、同じ属性のコンテンツが提示されるため、ユーザーにとっては新鮮味が欠けてしまう点も注意しなければなりません。

ハイブリッドタイプは、複数のレコメンデーションシステムを融合する手法のことです。たとえば、協調フィルタリングとコンテンツベースレコメンドを組み合わせて導入することを、ハイブリッドタイプのレコメンデーションといいます。複数のシステムを融合することで、それぞれのレコメンデーションが持つ欠点を補える点に、ハイブリッドタイプのメリットがあります。

関連記事:協調フィルタリングとは?基本的な考え方や種類を解説

レコメンデーションのメリットとデメリット

レコメンデーションは、今やECサイトに必須のシステムだといえます。欲しい商品を効率的に見つけられれば、ユーザーにとって恩恵が大きいですし、サイト側の立場で見ても、レコメンデーションが充実していれば売りたい商品を効果的に訴求できます。ただし、どれほど優秀なシステムにも、デメリットは付き物です。特定のシステムを導入する際は、事前にどういうメリットがあり、それに対するどのようなデメリットがあるのか、細かく理解しておきましょう。

レコメンデーションを導入することで、同時購買数、すなわちクロスセルが向上するというメリットを得られます。レコメンデーションでは、購入した商品の類似品や、同じ商品を購入した人が別に購入している商品などが表示されます。たとえば、洋服店でシャツを買ったら、そのシャツと合うジャケットやパンツも買いたくなるものです。ECサイト上ではレコメンデーションとして別の商品を表示することで、同時に購買する商品数を増やし、購入金額をアップさせる効果が期待できるのです。

ECサイトでは、店頭のように商品を全体的に見られません。本屋に行けば、何となく店内を歩いているうちに掘り出し物に出くわすこともありますが、ECサイトでは探している本しか見ることがなく、新しい発見が少ない点に欠点があります。しかし、レコメンデーションで類似の商品などが効率的に表示されれば、顧客は見たことのない商品に思わず出くわすかもしれません。欲しい商品が欲しいときに見つかるだけではなく、新しい発見ができるようになれば、顧客ロイヤルティーの向上にも大きくつながります。顧客ロイヤルティーが向上すれば、リピートや継続利用も期待でき、固定のユーザーを獲得できます。

レコメンデーションは新規のユーザーに弱いシステムだとされています。特に協調フィルタリングなどは、ユーザーの行動履歴に基づいて商品をレコメンドする手法であるため、そもそも行動履歴の分析ができない新規ユーザーに対しては効果的な訴求ができません。このように、データが少ない場合に効果的なレコメンドができない状態のことをコールドスタートといいます。

こうしたデメリットを解決・改善するには、ハイブリッドタイプのレコメンデーションで新規のユーザーの場合でも、レコメンドを反映できるようにするといった方法があります。また、新規のユーザーには売れ筋商品を紹介するなど、個別化していない情報を提示するなどして対応する方法も効果的でしょう。

関連記事:One to Oneマーケティングの必要性や目的とは?企業事例から学ぶ実践法

レコメンデーションの欠点は、データが少ない場合にレコメンドがうまく反映されないという点にあります。こうした欠点を補う手法として注目されているのがベイズ理論です。

ベイズ理論は、統計学の世界で提唱された理論です。その本質は、結果から原因を推測するという点にあります。ベイズ理論では、事前確率といって、まず主観的な確率を設定しておきます。たとえば、スーパーにやってきた男性がメロンを買うかどうか、その確率をまずは主観的に設定してしまうのがベイズ理論の考え方です。もちろん、男性がメロンを買うかどうかは誰にもわかりません。

そのため、まずは50%の確率で買うだろうという事前確率を主観的に設定します。そのうえで、男性がメロンを手に取ってみていたら、主観的に見て買ってくれる確率は上がるはずです。この段階で、購入する確率を70%に変更します。これを事後確率といいます。その後、実際に男性にメロンを購入するか聞いてみたら、男性はメロンを買わないと答えたとしましょう。その結果を受けて、事後確率は10%に設定し直されます。

このように、ベイズ理論は結果を見ながらその都度更新されていく確率論です。特に膨大なデータを分析する場合、そこに新しいデータが加わったとき、また一からデータを分析し直すより、データを更新していったほうが効率的でしょう。ベイズ理論はそのような場合に活用される統計理論です。ベイズ理論自体は18世紀から存在する理論で、トーマスベイズという人によって提唱されました。主観的な確率論に過ぎないとして、一時期は忘れ去られた考え方でしたが、コンピューターが発展するとともに再び注目されるようになった理論でもあります。

コンピューターはデータを分析することで学習していくものです。その機械学習の過程でベイズ理論が応用されるようになりました。たとえば迷惑メールのフィルタリングなどは、ベイズ理論が上手に活用されています。まず、事前に設定された迷惑メールの定義に基づいて、ユーザーが迷惑メールに分類したメールの法則性を分析します。その法則性を参考に、新たに受信したメールを調べ、新しいタイプの迷惑メールに対応していくというものです。

ベイジアンネットワークとは、ベイズ理論の考え方を用いて未来に起こりうる出来事を予測するための定理です。そもそも、人間の行動はさまざまな要因に左右されるため、数式では表せない不確実なものとされます。そのような不確定的な事象や、事象と事象との因果関係を、確率ネットワークの形態でモデル化したものがベイジアンネットワーク方式です。

マーケティング分野では、ベイジアンネットワーク方式がユーザーの行動予測に用いられています。事前確率という考え方によって、少ない情報でも精度の高い予測ができるため、協調フィルタリングなどのレコメンデーションを補う役割でベイジアンネットワーク方式が活用されています。

AIによるレコメンデーションは格段に進歩しています。ネットショップが一般化した社会において、ECサイトを訪れるのは買いたいものがはっきりしている人ばかりではありません。サイトを訪れてから、何を買うのか決める人も多く、そこにレコメンデーションの入り込む大きな余地があるといえます。AIによるレコメンデーションは、人間が認識できない潜在的な

思考を分類することが可能です。とりわけ、従来方式の機械学習からディープラーニングに変化したことによって、AIの精度は飛躍的に高まっています。こうした背景もあり、レコメンデーションにおけるAIの活用はますます進められています。

たとえば、ディープラーニングは画像認識に強いとされるため、AIを用いてユーザーの嗜好(しこう)に合致する商品の画像を表示して購買につなげるといった活用法も見られます。ファッションの好みなど、言語化するのが難しい嗜好(しこう)であっても、最適な商品やサービスを提示できるのがAIを用いたレコメンデーションの大きな強みだといえるでしょう。

費用対効果の高いマーケティングを実施するには、顧客の購買行動を把握することが大切です。「IDレシートBIツール」なら、消費者の購買や併買のデータを、店舗・カテゴリーを横断的に確認できます。膨大なデータを自社で集計・分析するには時間がかかるという場合に利用すると、効果測定の手間が大幅に短縮できるでしょう。また、同ツールでは、独自で構築した膨大なレシートデータから、コンビニエンスストア・スーパー・ドラッグストアなどの店舗別の売れ行きを可視化しています。POSデータでは見えづらかった自社商品の「買う人」と「買われた」をしっかりと把握できるため、自社と競合商品の実売価格・売上が確認でき、顧客の理解だけではなく、商談時の資料としても利用可能です。 「IDレシートBIツール」の詳しい情報はこちらをご覧ください。

ECサイトの運営において、レコメンデーションのシステムは必須の技術です。ただ、協調フィルタリングやコンテンツベースレコメンドなど、レコメンデーションの考え方は多様です。また、デメリットもあるため、ベイズ理論の応用など、確率論に対する深い知識も必要とされるでしょう。マーケティングに活用するためにも、まずはレコメンデーションの基本をしっかりと理解しましょう。

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